シンガポールで自宅出産と育児のあれこれ

日本で3人(うち2人は水中出産)シンガポールで1人自宅出産した記録と日々の子育ての色々を綴ります。

水中出産の利点

イタリア、オーストラリア、アメリカでの研究報告を幾つか読んでみました。

 

生まれるまでの時間が短くなる

会陰損傷が少ない

痛みが少ない

 

だそうです。

いずれの場合も、医療的な利点が確認されたと結論付けていました。(と言っても同じ研究ないで感性症などのリスクについては調査されていないので、あくまで調査した項目からそう言えるということだと思います。)

イタリア、オーストラリアの研究がされた病院は研究の同意が取れた分だけでも数年間で500件近い水中出産例を扱っていました。(だからと言って全土で普及しているとは限りませんが)日本だと病院やクリニックで水中出産のできるところってそんなに多い印象はないのですが、どうなんでしょう。

 

どの施設でももっと選択肢が多いといいなぁと思います。

そもそも「フリースタイル」という言葉がなんだか空々しいというか。

 

分娩台で産むのは医療者側の管理がしやすいからで、決して出産しやすい体勢ではありません。医療上の必要があって、分娩台を利用するのは合理的ですが、基本は「フリースタイル」の出産であるべきだから、「フリースタイル」を選べるというのが、前近代的な響きに聞こえてしまいます。

 

水中出産を経験した身としてはもっと広まって欲しいなぁと思うのでした。

 

自宅出産と逆子

今は逆子だと自宅出産の適応外になります。

私は第一子の時、確か32週頃まで逆子でした。

 

昔はいわゆる産婆さんが逆子を取り上げることもあったそうです。しかし、今のガイドラインでは逆子を自宅出産すること(助産院で管理すること)はできません。

また、産婦人科医の先生に聞いたところ、20年くらい前は病院でも逆子の経膣分娩をやることは少なくなかったが、今はほとんど見ない、とのこと。ひとくちに逆子と言っても色々なケースがあり、経膣分娩が可能な場合もあります。しかし、帝王切開での症例が増えるに従い、逆子を経膣分娩で出産させる医師が減少し(時間がかかり管理も大変、一方帝王切開は管理しやすい)その技術が継承されなくなり、逆子での経膣分娩が難しくなったようです。

 

余談ですが、日本の最近の帝王切開率は2割弱。WHOは望ましい帝王切開率を10〜15%としています。安易な帝王切開の選択(と途上国などの帝王切開率の低い国の出産環境の改善)に警鐘を鳴らしています。

 

逆子といえば「逆子体操」。

しかし最近逆子体操にエビデンスがないという話をよく聞きます。

さらっと調べた限りではこんな研究も。

http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp/dspace/bitstream/10069/31116/1/hokenn25_1_1.pdf

 

上記によればお灸も効くこともある、、、といった感じ。

私もよく効く(逆子が治る)との評判の鍼灸院へ行きましたが、ダメでした。

 

自宅出産をするには逆子を治さねば!

 

ということで「外回転術」という方法で逆子を直しました。(上記リンク先にも記述されています)具体的には胎児をモニターしながら医師がお腹に手を当ててぐるっと胎児を回す方法です。他の方法に比べて最も効果的と言えますが、やってくださった産婦人科の先生によると「やっても回らない子もいるからね〜」とのこと。もちろんリスクがないわけではありませんが、トライする価値はあると思います。

 

ただこの方法もどの医師でもやってくれるわけではないようですので、かかりつけ医が対応していない場合は、尋ねてみると良いかもしれません。

自宅出産〜陣痛がきてからしたこと

回数を重ねるに従って、これをやっておけばよかった、これをやってよかったということまとめました。

 

まずは出産1か月くらい前に、必要物品全てを一箇所にまとめました。ばらばらだと邪魔になるので、大きめの衣装ケース(蓋つきの)に全部入れたのですが、いざお産となった時にも物品が探しやすくてよかったです。

 

出産当日、いつもの張りと違うな〜陣痛かもな〜と思ったら、もう一度必要なものが揃っているか確認しました。4人目の時はベビー服の何枚かをまだ洗濯していなかったので、急いで洗濯をして乾燥機にかけました。

 

そのあとはいつお腹がすいても何か食べられるようにご飯を炊き、お味噌汁も多めに作りました。(自分の好みで陣痛中にも食べられるものを用意しておくといいと思います。)

 

そして陣痛を過ごす場所にお布団を敷いて、サイドテーブルを用意し、水筒に多めの水やハーブティーを入れていつでも飲めるように用意しました。周りにはバランスボールとアロマディフューザー、電気スタンド、音楽用にスピーカーを置きました。また冬の出産だった時は湯たんぽと電気あんかをお布団に入れました。

陣痛を過ごす場所は物がたくさん置けて、人が集まっても(家族や助産師さん)いいようにおうちの一番広い場所にすると快適です。そんな広い場所がない、という時は出産予定日近くになったら一時的にでも家具や不要なものを移動させて場所を確保した方がいいと思います。またこたつなどの大きいテーブルがあればそれをサイドテーブル代わりにするといいです。

 

そして記録をしっかり残したい場合、カメラは持って撮影する分とは別に、定点で動画を撮れるカメラかビデオか、スマホがあるといいです。私は、きっとここで産むというところの全景が入る場所にカメラを固定し、いざ!という時にスイッチを入れるようにお願いしました。

お風呂で産んだ時は浴室のシャンプーを置く棚にカメラを置いてみて、いい角度の置き方がわかるように印をつけておきました。手に持って撮るのももちろんですが、病院のようにスタッフがたくさんいるわけではないので、撮影に専念できなかった場合の保険になります。というか、自宅出産では家族は傍観者ではなく当事者としてお産をサポートする役割があります。撮影専属要員を依頼しているケースを別として、記録をちゃんと残したい場合は定点カメラはあった方がいいと思います。

 

で、ものの準備が揃ったら、一眠り。寝られるうちに寝て体力を温存しました。そのあとは、いい陣痛が来るようにと床を拭いたりストレッチをしたり、家族の付き添いで近くのカフェまで散歩にも行きました。また動けるうちにシャワーに入っておきました。

自宅出産の前に読んだ本

WHOの59カ条 お産のケア 実践ガイド

お産に関する一通りのことがわかりました

 

分娩台よ、さようなら―あたりまえに産んで、あたりまえに育てたい

 

分娩台よ、さようなら―あたりまえに産んで、あたりまえに育てたい

分娩台よ、さようなら―あたりまえに産んで、あたりまえに育てたい

 

 

有名な一冊。自宅出産するしないに関わらず読んでみる価値のある本です。

 

シーラおばさんの妊娠と出産の本

 

シーラおばさんの妊娠と出産の本

シーラおばさんの妊娠と出産の本

 

 

勧められて買いました。妊娠期からのことがよくわかります。

 

子供の生きる国―産んで育てて、ニッポン・イギリス・フランス

 

子供の生きる国―産んで育てて、ニッポン・イギリス・フランス

子供の生きる国―産んで育てて、ニッポン・イギリス・フランス

 

 

子育ても所変われば様変わり。「こうでないと!」という思い込みを壊してくれます。

日本のやり方もたくさんあるうちの一つ。そんなに神経質にならなくてもちゃんと赤ちゃんって育つんだなあと、楽な気持ちになりました。

 

出産準備学習ノート1 お母さん編 世界の夫婦は2人で学ぶ

 

出産準備学習ノート1 お母さん編 世界の夫婦は2人で学ぶ

出産準備学習ノート1 お母さん編 世界の夫婦は2人で学ぶ

  • 作者: アンドレア・ロバートソン,Helen Brawley,Joanne Acty,竹内正人,大葉ナナコ,ユール洋子
  • 出版社/メーカー: バースセンス研究所
  • 発売日: 2008/11/18
  • メディア: 単行本
  • クリック: 68回
  • この商品を含むブログを見る
 

 

 お父さん編もあります。

出産準備学習ノート2 お父さん編 世界の夫婦は2人で学ぶ

出産準備学習ノート2 お父さん編 世界の夫婦は2人で学ぶ

  • 作者: アンドレア・ロバートソン,Helen Brawley,Joanne Acty,竹内正人,大葉ナナコ,ユール洋子
  • 出版社/メーカー: バースセンス研究所
  • 発売日: 2008/11/18
  • メディア: 単行本
  • クリック: 19回
  • この商品を含むブログを見る
 

 

自宅出産する方は是非。翻訳本なので生活背景の違いはありますが、薄い本なので読みやすいです。日本で出版されているのとは一味違った出産準備実践集といった感じ。

自宅出産に向いてる人、向かない人

タイトルをつけておいてなんですが、きっと向かない人は自宅出産が選択肢に入りませんね。

 

じゃあどんな人が向いているか。

  1. 楽観的(心配性でない)
  2. うまく人を頼れる、任せられる
  3. 普段から病院に頼りがちではない

 

1、楽観的

初産では特に色々心配になることも多いかと思いますが、病院では常に誰かに対面で相談にのってもらえるのに対して、自宅出産では訪問時以外は電話かメールで相談することになります。小さな変化が気になって「これは大丈夫?」と気に病んでしまうくらい心配性な方は、常にプロがいる病院(もしくは助産院)出産を選んだほうがいいかもしれません。

 

2、うまく人を頼れる、任せられる

出産直後から家にいるので何かと気になってしまいますが、しっかり休むことも仕事のひとつ。何もかもお任せして、やってもらって療養に専念できないと、自分の体が持ちません。病院のように人材豊富ではない中でも、「私は何もしない!」と固く心に誓うことが大事です。

 

3、普段から病院に頼りがちではない

自宅出産を特徴づけるのは「医療ではないお産」だと思います。同じ条件だった場合、病院で産んだとしても介入としての医療がない場合もありますが、なかなか少ないのではないかと思います。(もしものための点滴ラインの確保や会陰裂傷の縫合など)

もちろん自宅出産であってもその経過によって、結果的に(良い悪いではなく)医療介入があるケースは考えられますが、スタート地点から「医療の中のお産」と捉えているのとでは考え方に隔たりがあります。

風邪や咳や鼻水くらい、「体調の変化」のうちの一つだからよく寝て治そう、と思うのか、「これは医療の手を借りなければ」(診察を受けたり薬を飲んだり)と思うのかは良いバロメーターになると思います。

里帰らない出産の乗り切り方

日本で3人産んだ時はいずれも里帰りせず、また身内のヘルプも頼めない状況でした。

出産年齢の上昇(祖父母の高齢化)や、祖父母が高齢になっても仕事を持っていることを考えると、産前や産後に里帰りをして協力を求めるのが難しくなっていると思われます。

 

しかし、産後を夫婦だけで乗り切るのは本当に大変です。

第一子であれば初めて尽くしで大変、第二子以降は兄弟児のお世話が加わって大変と、

つまりいつでも大変。シンガポールで第四子を出産した時はまさに夫婦だけだったのですが、それはそれは悲惨でした。(どれだけ悲惨だったか書きたい!)第四子ともなると、疲れから産後うつが忍び寄っているのを自覚して対処できましたが、初めてだったら間違い無く産後うつになっていたと思います。

 

第一子から第三子まではヘルパーサービスを利用しました。

産後を専門にしてヘルパーサービスからシッターサービスまでしてくれるところもありますし、地方でも家事だけなら頼めるところが意外とあります。

主に介護サービスをされている「ニチイ」も利用したことがありますが、

柔軟に対応してくださりとても助かりました。

 

サービス料は正直高い!でも背に腹はかえられません。

払えるお金があるなら何かを犠牲にしてでも利用したほうがいいです。

夫婦で乗り切ろうと頑張って、産後うつに片足入れた友人もいました。

自治体で補助をしているところも多いので尋ねてみるといいと思います。

 

また、シルバー人材センターも利用しました。民間に比して安価です。

来てくださる方は民間業者より当たり外れがあるかもしれませんが、

私はとてもいい方に巡り合い、「なんでもしてくださるおばあちゃん」として

第二子、三子出産でトータル3年以上お世話になりました。

 

里帰らない出産、身内ヘルプなし出産をする方、産後の計画はお早めに!

安全な自宅出産をするには

結論から先に。

 

日本には「公益社団法人日本助産師会」という組織があります。

公益社団法人日本助産師会

そこに所属している助産師さんを選ぶといいと思います。

公益社団法人日本助産師会 都道府県助産師会一覧

 

なぜか。

そこが「助産業務ガイドライン」を策定し、「助産師業務」について細かく定めているからです。

特に「助産師が管理できる対象者」として、これまでは「助産師が分娩可能と判断したもの」だったのが、2014年の改定から「助産師、産婦人科医師双方が経膣分娩可能と判断したもの」に変更されました。

その是非はともかく、助産師と医師の両方が「低リスクだから助産院出産でも大丈夫だね」となった場合のみ、自宅や助産院出産可能となります。

 

自宅出産や助産院出産というと医師の手を離れて助産師さんだけにお世話になるかと思われがちですが、決まった週数に嘱託の医師のもとで診察や検査を受けます。その度ごとに助産院、自宅出産で可能かどうか判断されます。

 

昔は逆子を助産師さんが取り上げるケースも少なくなかったようですが、このガイドラインでは逆子の場合、産婦人科医師の管理すべき対象者となっています。(昔は逆子でも経膣分娩可能なケースは病院でも経膣だったようですが、今はほとんど帝王切開になるかと思います。ここにも色々な問題が。。。)

 

つまり、妊娠段階から助産師と医師が協働して関わることでより安心安全なお産を目指していると言えると思います。

 

このガイドラインに沿った業務をされているかどうかが、安全なお産に努めている助産師さんかどうかの判断基準になると思います。

 

補足:ガイドラインがあるとはいえ、杓子定規にこのガイドラインを守らなければ危険!ということもないと思う部分もあります。肌感覚というか現場感覚というか、長年の経験で培われたシックスセンスみたいなのって今、大事にされませんよね。そういう世の中だから仕方ないのかな。